母親になったら必ず知っておきたい「愛着」とは

「愛着(アタッチメント)」という言葉を聞いたことがありますか?

実はこの「愛着」は、お子さんの心身の発達や成長に、とっても大きな影響を与えるものなんです。

残念なことに、私がこの「愛着」というものを知ったのは、随分と年を重ねてしまった後のことでした。

私自身、振り返れば、子どもの頃、親との間に安定した愛着関係を築けていなかったと感じています。

そのせいか、大人になってからも人間関係で悩みを抱えやすかったり、些細なことでも傷つき、心が不安定になることが多かったように思います。

特に、子育てをする中で、子どもとの距離感がわからず、母親として愛情を注ぐことができませんでした。子育てで問題を多く抱えてきたからこそ、愛着の大切さを痛感しています。

もし、今この記事を読んでいるあなたも、過去の私と同じように、子育てや人間関係において、 生きずらさを感じていたり、人間関係の困難さを感じているなら、ぜひこの先を読み進めてみてくださいね。

目次

心の土台となる「愛着」

赤ちゃんは生まれたときから、特定の養育者との間に、特別な絆を築こうとする生得的な欲求を持っています。

子どもと養育者との間に作られる情緒的な結びつき(心の絆)、これが「愛着です。

※特定の養育者とは、主に母親であることが多いですが、何らかの事情で母親が不在だった場合、父親や祖父母など、いつもお世話をしてくれる人が対象となります。

この愛着を通して、子どもは安心感や安全感といった心の土台を築いていきます。


お腹が空いた時、不安な時、寂しい時に、特定の養育者に抱っこされたり、優しく声をかけてもらったりすることで

「自分は大切にされている」
「困った時には助けてもらえる」

という信頼感が育まれるのです。

愛着理論とは

この「愛着」の重要性を最初に提唱したのが、イギリスの精神科医ジョン・ボウルビィです。

彼は、第二次世界大戦後の孤児たちの研究を通して、養育者との安定した関係が、子どもの心の発達に不可欠であることを強く認識しました。

ボウルビィの愛着理論の主なポイントは以下の通りです。

  • 愛着は生得的な行動システムである:

    赤ちゃんは生まれながらにして、養育者に近づこうとしたり、しがみついたり、泣いて助けを求めたりする行動(愛着行動)を持っています。これは、危険から身を守り、生存するために備わった本能なのです。
  • 特定の養育者との間の絆が重要:

    たくさんの大人に可愛がられるよりも、特定の養育者との間で、濃密で安定した関係を築くことが、子どもの心の安定には不可欠です。
  • 内的ワーキングモデルの形成:

    養育者との関わりを通して、子どもは自分自身や他者、そして世界に対する見方(内的ワーキングモデル)を形成していきます。

    安定した愛着を築けた子どもは
    「自分は愛される価値のある存在だ」
    「困った時には誰かに頼れる」
    といったように、社会に対してポジティブであたたかなイメージを持ちやすくなります。
  • 愛着の機能:

    愛着は、安全基地としての機能と、安心感の源としての機能を持っています。

    安全基地とは、子どもが社会に出て活動する際に、不安になったらいつでも戻ってこられる、安全な場所のこと。
    そして、養育者の存在そのものが、子どもにとって安心感の源となるのです。

愛着が安定していると、どんな良いことがあるの?

安定した愛着を築けた子どもは、以下のような発達が見られやすいと言われています。

  • 情緒の安定: 
    不安や恐怖を感じにくい、穏やかな心を育みます。
  • 自立心の向上:
    安心感を土台に、積極的に新しいことに挑戦する意欲が湧きます。
  • 社会性の発達:
    他者への信頼感を持ちやすく、円滑な人間関係を築きやすくなります。
  • 認知能力の発達:
    安心して探索活動に取り組めるため、知的好奇心や学習意欲が高まります。
  • ストレスへの強さ:
    困難な状況に直面した際にも、心の回復力が高い傾向があります。

愛着を育むために、私たち親にできること

では、私たち養育者は、子どもとの間に安定した愛着を育むために、どんなことができるのでしょうか?

  • 応答的な関わり:

    赤ちゃんの泣き声や表情に 注意深く耳を傾け、 欲求に適切に応えてあげましょう。
    「抱っこしてほしいのかな?」
    「お腹が空いたのかな?」
    と、その都度寄り添うことが大切です。
  • 温かいスキンシップ:
    抱っこやキス、なでるなどのスキンシップ は、安心感を与え、愛着形成を促します。
  • 一貫性のある養育:
    その日の気分で態度を変えるのではなく、 安定した態度で接することで、子どもは安心感を覚えます。
  • 楽しい時間の共有:
    一緒に遊んだり、絵本を読んだり、歌を歌ったりする時間は、親子の絆を深める大切な宝物です。
  • 養育者自身の心の安定:
    養育者自身が心身ともに 健康であることが、安定した愛着を育むための大前提です。

    もし、子育てでの困りごとや、困難さを感じている場合は、遠慮なく周囲に助けを求めてください。


愛着は、お子さんが、生きていく上で最も大切な心の土台となります。

ボウルビィの愛着理論を知ることで、その重要性を改めて認識し、日々の関わりの中で意識的に愛着を育んでいくことができるはずです。

言ってることはわかるけど心がついていかない…そんなあなたへ

ここまで読み進めて下さったあなたは、子どもにとって愛着がどれだけ大切なものか理解できたと思います。

しかし、愛着の大切さ知っても、子どもとの関わりを改善できなかったり

「言ってることはわかるけど心がついていかない」
「自分にできる気がしない」

このように感じ、ますます不安が増す場合も少なくありません。



もし、あなたがそのような状態にあるなら、あなた自身もまた、愛着が不安定なまま大人になった一人なのかもしれません。

不安定な愛着パターンを持つ場合、以下のような生きづらさや問題を抱えやすいことが研究でわかっています。

子育てにおける影響

子育ての困難さ:
自身の不安定な愛着経験から、子どもが発するサインや意思表示に適切に応答できなかったり、過干渉やネグレクトに陥りやすくなる可能性があります。

子どもの愛着形成への影響:
親の不安定な養育行動は、子どもの安定した愛着形成を阻害する要因となり得ます。

育児ストレスの増大:
子どもとの関係構築の困難さや、自身の過去の経験から、育児に対して強いストレスや不安を感じやすくなることがあります。


子育て以外の人間関係や自己認識への影響


対人関係の生きずらさ:
親密な関係を築くことへの恐れ、他者への不信感、過度な依存、 人間関係の不安定さなどが見られることがあります。

自己肯定感の低さ:
幼少期の愛情不足、虐待、ネグレクト、不安定な家庭環境においての経験から、自己肯定感や自信を持つことが難しい場合があります。

感情コントロールの困難さ:
強い感情をコントロールしたり、適切に表現したりすることが苦手になることがあります。

精神的な脆弱性:
うつ病、不安障害、パーソナリティ障害などの精神疾患のリスクが高まる可能性が指摘されています。


大丈夫、今からでも遅くはありません。

愛着がどんなものかを知っても、実際にはどんなものなのか、どれだけ重要なものなのか、体感までは得られないことの方が多いかもしれません。

私自身、愛着の不安を抱えていましたが、愛着によって得られる安心感を、感覚として身につけることは容易なことではありませんでした。

時間をかけてゆっくりと育てていった感覚の一つです。

「愛着は乳幼児期に身につけるものだとしたら、大人になった自分はもう手遅れなのでは?」と、不安に思う方もいると思います。

私は、大人になった今からでも遅くはないと思っています。なぜなら、何人もの受講生たちが変わっていく姿を間近で見てきたからです。

人間の最も土台となる大事な部分だからこそ、気づいた今から育て直すことが大切です。

とはいえ、愛着を育むプロセスは、一人で取り組むことは正直難しいことなのかもしれません。本来、愛着は、養育者との安心と信頼の関係性の中で育まれるものだからです。

私たちが提供している、心の土台構築実践プログラムでは、カウンセラーが、母や父の代わりとなり優しく根気強く寄り添いながら、心の土台づくりに一緒に取り組んでいきます。

土台づくりのプロセスは、子育てにとてもよく似ています。

取り組む姿勢で個人差は出るかも知れませんが、自分の心の傷を癒し、自分の思考の歪みに気づき、真っ直ぐなものの見方を再構築していくことを試行錯誤しながら実践を重ねていきます。

「学び、実践し、気づき、繰り返す」シンプルでわかりやすく、覚悟さえ決めれば、特別なスキルを必要としません。

ありのままの自分を受け入れてもらえる経験が、あなたには必要なのです。


私たちは、決してあなたを一人にしません。一人で抱え込まないで下さいね。



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