過干渉な親に育てられた娘がうつ状態に。母親が見直したい子どもとの関わり方

子どもが学校に行けなくなったり、うつ状態になってしまったら。親としては心配でたまらなくなりますよね。
「何とかしなきゃ」
「この子はどうなってしまうんだろう」
「自立できるの?」
そんな思いから、病院を探したり、カウンセリングを勧めたり、何とか子どもを動かそうとすることもあると思います。
多くのお母さんは、これを「子どものためを思う親心」だと考えています。もちろん心配する気持ちもあるでしょう。
でももし、子どものためを思って一生懸命関わっているのに何故かうまくいかないとしたら。その背景には、母親自身も気づいていない心の課題が隠れていることがあります。
何とかしてあげたい。少しでもよい方向に進んでほしい。そんな思いが強いほど我が子を変えようと必死になってしまうけれど、子どもへの関わり方を変えていくには、まず母親自身の心に目を向けることも大切です。
今回は、娘さんの不調をきっかけに、自分自身の子育てを見つめ直していった真弓さん(仮名)の事例を通して、子どもとの関わり方を見直すヒントをお伝えしますね。
優秀だった娘が大学休学、うつになった。
真弓さんの長女は、もともと勉強ができ、絵や文章を書くことも得意なお子さんでした。
しかし、高校に進学した娘さんを待っていたのは、周りにも学力の高い優秀な生徒がたくさんいる環境。
それまで勉強が得意で、自信を持っていた娘さんにとって、思うようにいかないことは、はじめて経験する挫折でした。次第に勉強への意欲も失っていき、学校にも行けない日が増え不登校に。
その後なんとか高校を卒業し、大学に進学したもののうまくいかず休学。今の自分から目を逸らすかのように、恋愛にのめりこんでいきました。でも、辛い恋愛を繰り返すばかりで、これもうまくいきませんでした。
そんな娘さんに段々とうつ症状が見えはじめ、「死にたい」と口にするようになり、部屋にこもる日が増えていったのです。
何とかしなければと、娘にカウンセリングを勧めたり、いくつもの病院に連れていったり。自分自身もカウンセリングを受けたりと、あらゆることを試しました。とにかくじっとしてはいられなかったのです。
けれど、何とかしたいという気持ちが強くなるほど、娘の状態も親子関係も悪くなる一方で、真弓さんの不安と焦りはどんどん大きくなっていきました。
子どもを支えるために、まず見直したいこと
子どもが何らかの問題を抱えたとき、病院を受診したり、カウンセリングなどの専門的な支援につなげることは、大切な選択肢の一つです。
一方で、子どもを支えていくために、まず目を向けたいのが、家庭の中で安心して過ごせているか、親子関係が安定しているかということです。
もちろん、子どもの問題をすべて親や家庭のせいにすることはできません。ただ、カウンセリングの現場では、子どもへの接し方や家庭内の関わり方を見直す必要があるケースが本当に多いのです。
ポイント1:お母さん自身のマインド
子どもがつらい状況にあるとき、親も不安や心配でいっぱいになってしまい、気持ちに余裕がなくなるのは自然なことです。
そんな状況の中で、自分の感情を落ち着かせ、子どもの話を冷静に聞くことは決して簡単なことではありません。
それでも、子どもを支えていくためには、まずお母さん自身の感情をできる限り安定させることが大きなポイントになってきます。
- 子どもが自分の気持ちを安心して話せること
- 失敗したり思いどおりにできなかったりしても、安心していられる家庭であること
これらがとても大切なんですね。
そのためにも、
子どもの話を最後まで聞ける、傾聴力。
すぐに否定したり、求められていないアドバイスはせず、まずは子どもの気持ちを受け止められる、受容する力。
この二つは、お母さんたちに持ち合わせて欲しいマインドです。
ポイント2:環境を見直す
また、子どもに影響を与えるのは、親子関係だけではありません。夫婦の関係や、きょうだいとの関係など、家庭内のさまざまな要素も関わってきます。
ただ、先ほどお伝えした通り、ほとんどの親御さんが頭では感情的にならずに接したほうがいいとわかっているし、子どもの気持ちを受け止めることが大切だって理解しています。
それでも実際に我が子を目の前にすると、なかなか思うようにできない場合が大半です。もちろん私もそうでした。
頭では落ち着いて接したいと思っていても、焦りや不安に押されて、つい感情的に反応してしまう。何度も同じことを繰り返してしまう。お母さんたちはそんな自分を責めてしまいます。
そんなときは、子どもへの接し方だけでなく、お母さん自身の心にも目を向ける必要があるのです。
なぜ子どものことになると、これほど不安になるのか。
なぜ、わかっていても行動を変えられないのか。
その背景を知るために、振り返っておきたいのが、自分自身がどのような環境で育ち、どんな考え方や価値観を身につけてきたのかということです。
カウンセリングの中で、真弓さんもまた、自分が育ってきた環境を振り返っていきました。
自分が育ってきた環境は、子育てに影響する
真弓さんは商売を営む家庭で育ちました。とても厳しかった母親からは、「一つのことだけじゃダメ。三つくらいのことを同時にやりなさい」と、叩き込まれました。
そんな教えのなかで育った真弓さんにとって、複数のことを手際よくこなすのは当たり前のことでした。だからこそ、娘の要領の悪さを見ると、「どうしてそんなに遅いの?」とイライラしました。

その他でも、娘がゆっくり過ごしている姿を見ると無性にイライラしました。家の中で、ただくつろいでいるだけなのに怠けているように感じてしまうのです。
時間を少しでも守れないと、「ルーズでだらしない。このままでは社会に出て通用しない。今のうちに正してあげなければ」と、必死になりました。
それは、娘の将来を思ってのことでした。だからこそ自分の関わり方が娘さんを追い詰めているかもしれないとは、思いもしなかったのです。
私たちは、自分が育ってきた環境の中で身につけた考え方や行動を、無意識のうちに子育てでも繰り返してしまいます。
「こうするのが普通」
「これくらいできて当たり前」
「最後までやり通すべき」
そんな考え方も、自分にとっては当たり前すぎて、疑問を持つことすらないかもしれません。
けれど、子どもには子どものペースがあり、考え方があるのです。
子どもを変えようとするのをやめたら、娘が自分で動き始めた
真弓さんはカウンセリングを通して、自分と向き合い、娘への関わり方を見直していきました。
それまでカウンセリングを受けるよう勧めたり病院に連れていったりと、何とか娘さんを動かそうとしていましたけれど、繰り返し促すことをやめ、娘さんの様子を見守るようにしたのです。
すると、娘さんは少しずつ自分から動き始めました。
積極的にアルバイトをしたり、高校時代の友人に自分から連絡を取り、友人と一緒に料理教室にも通うようになりました。教室の月謝を自分で支払えたことにも驚きました。
これまでは「どうせこの子は払えないだろう」と決めつけて、先回りして真弓さんが支払ってしまっていたから気づけなかったのです。
料理教室に通い始めた話をシェアする中で、自分の中に「こうあるべき」という高い基準があったことにも気づきました。
どこまで上達するのか、どんな成果が得られるのか。「娘が楽しめているか」よりも、やるからには、将来役に立つものを身につけ、目に見える成果を出すことばかり求めていたのです。
でも娘さんが料理教室に求めていたのは、プロになることでもなんでもなく、ただただ料理を楽しみたい。作ったものをみんなで美味しくいただく。シンプルにやってみたいからやる。
そんな娘を見ていると、
「私は今まで何を楽しみに生きてきたんだろう」
「人生このままでいいのだろうか」
と、今後の自分の人生や、心の声にも目を向けるようになっていったのです。

真弓さんは、娘さんの行動を少しづつ見守れるようになれたことで、自分が口を出さなくても、娘が自分で考え、選び、行動できることを実感していきました。
もちろん口出しをやめたり見守ることだけで、娘さんのうつ状態が改善したという意味ではありません。
それでも、親が圧を与えてコントロールしたり、先回りして動かすのではなく、子ども自身の力を信じて、関わることには大きな意味があるのです。
子どもの回復を支えるために、母親自身の心を整える
不登校やうつ状態など、子どもが抱える問題は、親にとっても心の負担が大きいものです。
どうしたらいいのかわからない
この先どうなってしまうのか不安でたまらない
そんなふうに、母親自身の心も揺れ動きます。
だからこそ、子どもへの対応方法を学ぶだけではなく、不安や焦りに揺れ動く、自分の心を整える術を身につけておくことが、子どもを支えるための土台として欠かせません。
子どもを支えるために、まずは母親自身が自分の心と向き合い整えていくこと。それが、子どもとの関わり方を見直していくうえでも大切なんですよ。
